研究成果03

口頭発表

口頭発表2013年(平成25年)

1.

In vivo evaluation of murine norovirus mucosal vaccine against challenge with Japan isolated strain S7

Takeyama, N.1, 2), Kiyono, H.1)and Yuki, Y.1)
Nippon Institute for Biological Science

1) Division of Mucosal Immunology, International Research and Development Center for Mucosal Vaccines, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
2) Nippon Institute for Biological Science
第42回日本免疫学会学術集会、2013年
Abstract: Norovirus (NV) belongs to the Caliciviridae family with non-enveloped, positive-strand RNA. Over 60% of non-bacterial gastroenteritis outbreaks are due to human NV (HNV), which is a major public health concern. The lack of HNV cell culture system and animal infection model hampers the studies in HNV vaccine development. The discovery of murine NV (MNV) has provided a great volume of biological information of NV. In this study, we established the mouse MNV infection model by using MNV-S7 strain isolated in Japan, and used it for the mucosal vaccine evaluation. When Balb/cA mice were orally inoculated with 7.5log10 TCID50/dose of MNV-S7, MNV-RNA and the viral titers could be detected in fecal samples from 1 day post infection (dpi). The excretion of MNV-S7 in feces persisted for at least 2 weeks, with peaks between 1 to 5 dpi. After 14 dpi, MNV-RNA and viral titers decreased, which might be attributed to antigen-specific host immune responses. Using newly established MNV-S7 infection model, we vaccinated Balb/cA nasally with inactivated MNV-S7 or recombinant MNV VP1 P-domain [rVP1(P)], together with or without cholera toxin. VP1 specific antibodies in both systemic and mucosal compartments, particularly with high levels of serum IgG, were induced in both groups. After MNV-S7 challenge, vaccinated mice showed a slight decrease in MNV-RNA and the viral titers at 5 and 7 dpi, indicating that nasal vaccination with viral proteins exhibited a partial protection against MNV-S7. These results will be a support in improving the further researches in host immunity on NV and the vaccine development of NV.

2.

Establishment of Murine Norovirus S7 Infection System for Vaccine Development

Takeyama, N.1, 2), Yingju, C.1), Tohya, Y.3), Oroku, K.2), Kiyono, H.1)and Yuki, Y.1)
1) Division of Mucosal Immunology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
2) Nippon Institute for Biological Science
3)
Department of Veterinary Medicine, College of Bioresource Sciences, Nihon University
International Congress of Immunology 2013, Milano
Abstract: Norovirus (NV) belongs to the Caliciviridae family with non-enveloped, positive-strand RNA. Over 60% of non-bacterial gastroenteritis outbreaks are due to human NV (HNV), which is a major public health concern. The lack of HNV cell culture system and animal infection model hampers the studies in HNV vaccine development. The discovery of murine NV (MNV) has provided a great volume of biological information of NV. In this study, we aimed to establish the MNV infection mouse model by using MNV-S7 isolated in Japan, as an alternative approach for HNV vaccine development. When Balb/cA and C57BL/6J were orally inoculated with 7.5log10 TCID50/dose of MNV-S7, MNV-RNA and the viral titers could be detected in fecal samples from 1 day post infection (dpi). The excretion of MNV-S7 in feces persisted for at least 2 weeks, with peaks between 1 to 5 dpi. After 14 dpi, MNV-RNA and viral titers decreased, which might be attributed to antigen-specific host immune responses. Using newly established MNV-S7 infection model, we vaccinated Balb/cA nasally with MVN-S7 recombinant VP1 P-domain [rVP1(P)], together with or without cholera toxin. VP1 specific antibodies in both systemic and mucosal compartments, particularly with high levels of serum IgG, were induced in both groups. After MNV-S7 challenge, vaccinated mice showed a slight decrease in MNV-RNA and the viral titers at 5 and 7 dpi, indicating that rVP1(P) exhibited a limited protection. These results will be a support in improving the researches in host infection and immunity on NV and the vaccine development of NV.

3.

経口コメ型ワクチン MucoRice-CTB における主要アレルゲンのプロテオーム解析

黒河志保1, 2)、中村里香3)、目島未央2)、秦裕子2)、黒田昌治4)、竹山夏実2, 5)、尾山大明2)、 佐藤茂1)、清野宏2)、増村威宏1)、手島玲子3)、幸義和2)
1) 京府大院・生命環境
2) 東大・医科研
3) 国立衛研・代謝生化学
4) 中央農研・北陸セ
5) 日本生物科学研究所
日本農芸化学会関西支部第479回講演会、2014年
要旨:【目的】 これまで、RNAi技術を用いて米の主要貯蔵タンパク質13kDa プロラミンおよびグルテリンAをノックダウンすることによりコレラトキシンBサブユニット(CTB) を過剰発現させた経口ワクチン米「MucoRice-CTB」の開発を進めてきた。ヒトへの実用化を目指すにあたり、MucoRice-CTBは米粉末を精製することなく経口投与することになるため、遺伝子導入による内在アレルゲンタンパク質の発現蓄積への影響を無視できない。そこで、本研究ではプロテオーム解析手法を用いて野生米(日本晴:WT) との比較を行うことにより、MucoRice-CTBにおける米の主要アレルゲンタンパク質の発現差異を評価した。 【方法および結果】 1M NaClで抽出したWTとMucoRice-CTBを米アレルギー患者血清を用いてIgEイムノブロットにて解析したところ、MucoRice-CTBにおいて分子量10-15kDaのアレルゲンタンパク質がWTと比べて顕著に減少していた。そこで、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)法を用いて分離された単一のタンパク質スポットを詳細に比較した。その結果、α-amylase/trypsin inhibitor-like protein familyのうち10個のスポットの発現レベルがWTと比較してMucoRice-CTBで有意に減少を示した。分離ゲル上で分子量14-16kDaを示すスポット群は、先行研究のMALDI-TOF-MS/MS解析によって米の主要アレルゲンとして同定されており、今回の米アレルギー患者血清のイムノブロットの結果とも相関した。その他、既にアレルゲンとして同定されている19kDa globulinのうち4スポットで発現レベルの減少が認められた。さらに、52kDa-、63kDa globulin、glyoxalase I の各スポットについては有意な増減はみられなかった。 この結果を裏付けるために、さらにShotgun-MS解析を用いて米のアレルゲンタンパク質の網羅的な発現差異解析を行った。その結果、RAG2をはじめとするα-amylase/trypsin inhibitor-like protein familyの5種類のタンパク質および19kDa globulinが予想通りMucoRice-CTBで減少しており、2D-DIGEの結果とも相関した。 今回の結果はアレルゲン発現の観点から、経口ワクチン米としてのMucoRice-CTBの安全性を評価する指標の一つとなり得るものと考えられた。

4.

日本晴と組換えワクチン発現イネにおけるコメアレルゲンRAG2タンパク質の種子内局在部位

黒河志保1, 2)、黒田昌治3)、目島未央2)、中村里香4)、高橋裕子2)、相良 洋2)、 竹山夏実5)、佐藤茂1)、清野宏2)、手島玲子4)、増村威宏1)、幸義和2)
1) 京府大院・生命環境
2) 東大・医科研
3) 中央農研・北陸セ
4) 国立衛研・代謝生化学
5) 日本生物科学研究所
日本農芸化学会関西支部 第480回講演会、2014年
要旨:【目的】コメ型経口コレラワクチン(MucoRice-CTB-RNAi)は、RNAi 技術を用いてイネの主要貯蔵タンパク質の発現を抑制するとともに、ワクチン抗原としてのCTB(コレラ毒素B 鎖)を発現した組換えイネである。MucoRice-CTB-RNAi はコメ粉末を精製することなく経口投与するため、内在アレルゲンタンパク質に関する安全性の懸念からその発現と局在を明らかにしておくことは重要である。本研究では、既に局在部位が明らかな19kDa globulin と、米アレルギー患者の主要アレルゲンとして重視されているが、その局在部位が未知であるRAG2 タンパク質の発現と局在を日本晴(WT)、および3 種類の組換えイネの種子を用い比較、解析することを目的とした。 【方法・結果】組換えイネとして上記のMucoRice-CTB-RNAi、ワクチン抗原のみを発現したMucoRice-CTB、RNAi のみを導入したMucoRice-RNAi の3 種類を作出し、対照としてWT を用いた。ウエスタン分析に加え、これらイネの種子より超薄組織切片を作製し、蛍光免疫組織観察および免疫電顕観察を行った。RNAi(13kDa プロラミンとグルテリンA を同時に抑制)を導入した2 種類の組換えイネにおいて、プロラミンが蓄積するProtein body-I (PB-I)、およびグルテリン・グロブリンが蓄積するPB-IIの数がWT やMucoRice-CTB に比べて著しく減少し、形状も小さくいびつであった。CTB の局在はMucoRice-CTB ではPB-II 、細胞質に観察されるのに対し、MucoRice-CTB-RNAi ではPB 以外に細胞壁やPB 様構造体に多数観察された。また、アレルゲンタンパク質である19kDa globulin とRAG2 はMucoRice-CTB-RNAi においてのみ発現量が減少していた。両アレルゲンの局在部位は、WTにおいて非常に似ており、主にPB-II に存在した。しかしRAG2 は、3 種類の組換えイネにおいて細胞膜あるいは細胞壁にも局在し、MucoRice-RNAi で顕著であった。この傾向はMucoRice-CTB-RNAi におけるCTB の局在とも似ていることから、組換えイネにおけるRAG2 の局在部位の変化や発現量の減少は、RNAi 効果によるCTB の過剰発現がRAG2 の合成、集積過程と競合していると予想された。

5.

越年魚のマハタ人工種苗に対するウイルス性神経壊死症不活化ワクチンの安全性と有効性

黒田丹1)、佐竹弘守1)、永野哲司1)、岩田晃1)、布谷鉄夫1)、羽生和弘2)、中村砂帆子2)、辻将治2)、宮本敦史2)、土橋靖史2)、森広一郎3)、中井敏博4)
1) 日本生物科学研究所
2) 三重県水産研究所
3) (独)水産総合研究センター増養殖研究所
4) 広島大学院生物圏科学研究科
平成26年度日本水産学会春季大会、2014年
要旨:【目的】近年のマハタ養殖では、陸上水槽で生産されたマハタ人工種苗(0才魚)に対して9~10月頃に市販ワクチンを接種して免疫を付与した後、野外へ沖出しする方法が定着しつつある。一方、マハタは出荷までおよそ2~3年の育成期間があり、歩留まりや接種コスト等の生産性を考慮した場合、越年魚に接種するケースについて検討すべき余地を残している。越年魚のマハタ人工種苗(平均体重128gを越え、使用説明書の用法外サイズとなる)に市販ワクチンを初回投与した場合の安全性と有効性について調べた。 【方法】越年魚のマハタに対して接種に適当な注射針の長さを予め確認した後、マハタ(平均体重202g)の腹腔内に0.1mLのワクチンを1回接種した。投与後3週のワクチン接種群(V群)と無接種対照群(C群)に対して攻撃試験を実施して累積死亡率を比較すると共に、本ワクチンの検定基準方法に従って両群の血清を回収し、ウイルス中和抗体価(115倍以上を有効とする)によって有効性を調べた。さらに投与後6ヶ月まで血清中のウイルス中和抗体価の推移を見、本ワクチンの免疫持続性を調べた。 【結果】接種用注射針の長さを検討した結果、平均体重268g以下のマハタでは、液漏れや臓器損傷の危険性が少ない4mmが妥当であった。攻撃試験においてV群とC群の累積死亡率はそれぞれ4%と56%であり(P<0.01で有意差あり)、さらにウイルス中和抗体価はそれぞれ742と37であったことから、本ワクチンの有効性が認められた。免疫持続試験では接種後6ヶ月まで有効性を示す中和抗体価と抗体陽性率が認められた。V群の臨床症状や一般状態はC群と比較して差は認められず、本ワクチンの安全性が認められた。本疾病流行期前のマハタ人工種苗1才魚(約130~200g)に対して、用法用量に従った本ワクチンの利用は可能であると判断された。
6.

ウイルス性神経壊死症不活化ワクチンを投与したマハタの翌年の中和抗体価の推移及びワクチンの有効性(野外症例報告)

黒田丹1)、佐竹弘守1)、永野哲司1)、岩田晃1)、布谷鉄夫1)、中村砂帆子2)、辻将治2)、宮本敦史2)、土橋靖史2)、中井敏博3)
1) 日本生物科学研究所
2) 三重県水産研究所
3) 広島大学院生物圏科学研究科
平成26年度日本水産学会春季大会、2014年
要旨:【目的】マハタ養殖では、陸上水槽で生産されたSpecific Pathogen Freeの人工種苗に本ワクチンを単回接種して免疫を付与した後、同年秋に野外へ沖出しし、その後出荷まで海面生け簀でおよそ2-3年間育成することになる。しかし、接種した年の翌年の野外のマハタにおけるワクチン効果を調べた知見は少ない。本報告では、種苗生産年度にワクチン接種して沖出ししたマハタの翌年のワクチン効果を調べると共に、翌年の本疾病流行期前に新たに接種機会を設けたケースと比較する。 【方法】三重県で生産された2012年産のマハタ人工種苗を用い、同県尾鷲湾の海面生け簀で試験を実施した。種苗生産年度にワクチン接種して野外に沖出ししたマハタ(A群:生産年度+(接種有り)、次年度 - (接種なし))の翌年における中和抗体価、増体重及び死亡率の推移を調べた。比較として二回接種群(B群:生産年度+、次年度+)、沖出し後接種群(C群:生産年度 - 、次年度+)及び無接種対照群(D群:生産年度 - 、次年度 - )について同様に評価した。次年度のワクチン接種は5月に行い、6月から12月まで2ヶ月おきに上記指標についてモニタリングした。 【結果】A群の中和抗体価は次年度夏期に一度下降したものの、流行期を経て上昇し、対照群に比較して試験期間中高く推移した。またA群の生残率および増体重は、対照群のそれらより高い値を示した。全群を比較したところ、中和抗体価の上昇と持続性はB群>A群>C群>D群の順であり、12月時点の生残率の高さも同様の順であった。増体重はA群=C群>D群>B群の順であった。試験期間中の死亡魚の主因は本疾病であることを確認した。0才魚に対する本ワクチン単回接種は翌年の本疾病の発生に対しても死亡率低減効果を有すると判断された。また、翌年疾病流行期前の追加接種はより高い生残率をもたらすことが示唆された。
7.

クエに対するウイルス性神経壊死症不活化ワクチンの有効性と安全性

黒田丹1)、佐竹弘守1)、満岡潤1)、永野哲司1)、岩田晃1)、布谷鉄夫1)、山下浩史2)、中井敏博3)
1) 日本生物科学研究所
2) 愛媛県農林水産研究所水産研究センター
3) 広島大学院生物圏科学研究科
平成26年度日本魚病学会春季大会、2014年
要旨:【目的】人工種苗生産技術に目処がついたマハタ(Epinephelus)属の高級魚クエは、西日本域で放流用あるいは養殖用種苗として毎年大規模に生産する体制が整えられ、その実績が積み上げられて来ている。一方、多くのマハタ属魚類の間で猛威を奮うウイルス性神経壊死症(VNN)が本種の種苗生産及び育成過程においても大きな問題となっており、その被害は軽視できない。原因ウイルスはベータノダウイルスであり、マハタで問題となるベータノダウイルスと同じ遺伝子型RGNNV・血清型Cであることがこれまでに分かっている。そこで、現在市販されているVNN不活化ワクチン(対象魚種マハタ)をクエに適用し、その有効性と安全性について検討した。 【方法】クエ人工種苗(愛媛県産)に、使用説明書記載の用法用量に従って腹腔内に0.1mLの市販ワクチンを1回接種した。ワクチンの有効性について、投与後3週のワクチン接種群と無接種対照群に対して攻撃試験を実施し、累積死亡率や臨床症状を比較した。また、投与後3週の血清中に含まれるウイルス中和抗体価を指標として有効性の評価を試みた。これらの評価方法を利用して、ワクチンの免疫原性、ワクチンが適用できる魚体重、最小有効抗原量及び免疫持続性について調べた。また、ワクチンの安全性について、クエを用いたGood Laboratory Practice(GLP)適合試験を実施した。 【結果】本ワクチンは、遺伝子型RGNNV・血清型Cのベータノダウイルス(マハタ由来株及びクエ由来株)に対して有意な感染防御効果を示した。また平均体重9~180gのクエに免疫原性を有し、ワクチン接種後3週間で十分な免疫が付与され、少なくとも接種後6ヶ月までワクチン効果が継続することが認められた。また最小有効抗原量試験の結果から、市販ワクチンに含まれる不活化ウイルス抗原量は、クエに十分な免疫を付与すると判断された。本ワクチンのクエに対する安全性試験をGLP適合試験として実施し、適用量単回腹腔内投与は安全性上問題がないことを確認した。市販VNNワクチンは、クエ(平均体重9~180g)に対しても有効性と安全性が認められると考えられた。
8.

日生研TGE・PEDワクチンの特徴および効果

佐藤哲朗
JASV衛生セミナー、2014年
9.

新たに開発したマイクロサテライトDNAマーカーによる野生系ウズラの遺伝的特性評価

只野亮1)、韮澤圭二郎2)、布目三夫3)、水谷誠3)、川原玲香4)、河野友宏4)、藤原哲5)、松田洋一3)
1) 岐大応用生物
2) 畜草研
3) 名大院ABRC
4) 東京農大生物資源ゲノム
5) 日本生物科学研究所
日本家禽学会2013年度秋季大会
要旨:[目的]野生系ウズラは、1965~70年に富士山麓で捕獲された野生のウズラを基に造成された系統である(河原, 1976)。この系統は、家禽ウズラとは異なる遺伝子構成を持っていると考えられる。しかしながら、これまでDNAレベルでの特性評価は行われておらず、系統内の遺伝的多様性や家禽ウズラとの遺伝的分化の程度は不明である。本研究では、新たに開発したウズラのマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、野生系ウズラの遺伝的特性を明らかにすることを目的とした。[方法](独)畜産草地研究所で維持されている野生系ウズラ♂79羽・♀249羽の中から、♂16羽・♀24羽の合計40羽をランダムに選び、血液からゲノムDNAを抽出した。次いで、ウズラのゲノム解析の結果から開発した、CAリピート部位を増幅する47の新規マイクロサテライトDNAマーカーを用いて、遺伝子型を判定した。また、家禽ウズラ5系統(実験用系統・合計200羽)も併せて解析し、野生系ウズラとの比較を行った。[結果]野生系ウズラで検出された合計191のアレルの内、62(32.5%)が家禽ウズラ5系統には全く存在せず、野生系ウズラのみに固有なものであった。これらの野生系ウズラに特徴的なアレルは、高い頻度で系統内に分布していた(遺伝子頻度が最大で、72.5%)。家禽ウズラ系統の1座位あたりの平均アレル数は、1.34から2.34の範囲であったが、野生系ウズラのそれは、4.06であった。また、家禽ウズラのヘテロ接合率(観察値)は、0.11から0.35であったが、野生系ウズラでは、0.53であった。これらの結果から、野生系ウズラが、家禽ウズラ(実験用系統)の2倍程度の高い遺伝的多様性を保持していることが明らかとなった。また、野生系ウズラと家禽ウズラ系統間での遺伝的分化の程度(FST)は、0.23から0.42の範囲であり、比較的高かった。

10.

実験用ウズラ5系統の遺伝的多様性ならびに系統相互の遺伝的分化

只野亮1)、布目三夫2)、水谷誠2)、川原玲香3)、河野友宏3)、藤原哲4)、松田洋一2)
1) 岐阜大応生
2) 名大院ABRC
3) 東京農大生物資源ゲノム
4) 日本生物科学研究所
日本畜産学会第117回大会
要旨:【目的】ウズラは、世代間隔が短く多産であることから、実験動物としても有用性が高い。本研究では、実験用ウズラ5系統の遺伝的特性を評価し、これらを活用していく上において、有益な情報を得ることを目的とした。 【方法】ウズラのゲノム解析の結果から、新たに実用化した47のマイクロサテライトDNAマーカーを用いて、5系統[LWC、AMRP、Quv、RWN、rb (名古屋大学鳥類バイオサイエンス研究センター保有)]について、系統内の遺伝的多様性と系統相互の遺伝的分化の程度を評価した。 【結果】1座位あたりの平均アレル数は、1.34(rb)~2.34(Quv)の範囲であり、19.1(LWC)~46.8%(rb)の座位が系統内で固定していた。5系統のヘテロ接合率(観察値)は、0.11(rb)~0.35(LWC)の範囲であった。これらの結果から、rbが最も遺伝的均一性が高く、実験動物としての利用という観点からみた場合に、有用性が高いと考えられた。5系統間の遺伝的分化の程度(FST)は、0.41~0.70の範囲であり、高い分化が生じていた。これは、各系統が少数の個体から造成された事や、その後の人為的選抜に起因するものであると考えられる。
11.

マイクロサテライトマーカーを用いたニホンウズラの野生集団および家禽化集団における遺伝的多様性の調査

布目三夫1)、只野亮2)、中野幹治1)、川原玲香3)、河野友宏3)、藤原哲4)、韮澤圭二郎5)、水谷誠1)、松田洋一1)
1) 名大・生命農・ABRC
2) 岐阜大・応用生物
3) 東京農大・生物資源ゲノム解析センター
4) 日本生物科学研究所
5) 畜草研
日本鳥学会2013年度大会
要旨:ニホンウズラは日本で家禽化(家畜化)された唯一の動物種である。ニワトリに比べ、ウズラは体サイズが小さく性格も温和で飼育に適しており、世代時間が短く、産卵数も比較的多い。そして近年、ニホンウズラのドラフトゲノム配列が解読され(Kawahara-Miki et al., 2013)、ニワトリにならぶ鳥類のモデル動物としてライフサイエンス研究において大きな貢献が期待されている。一方で、その原種である野生のニホンウズラは個体数の減少が報告され、今年の5月には環境省によって希少鳥獣に指定された。本種の保全を考える上で野生ウズラの遺伝的多様性や地域集団構造を明らかにすることは非常に重要である。また、他のモデル動物と同様に、家禽(家畜)集団と野生集団との遺伝的特性の違いを把握することは、本種を用いた遺伝育種や遺伝学的研究を行う上で必要である。 本研究ではニホンウズラの家禽集団および野生集団における遺伝的多様性についてマイクロサテライトマーカーを用いて調査し、両者を比較することを目的とする。マイクロサテライトマーカーは、近年解読されたニホンウズラのドラフトゲノム配列を基に作成された約100マーカーを用いる(Kawahara-Miki et al., 2013)。これらはウズラの1番染色体から28番染色体および性染色体を広くカバーするよう設計されており、ゲノム全体の遺伝的多様性の把握が可能である。これまでの研究の結果、名古屋大学が保有する長期閉鎖系ウズラの遺伝的多様性は、AMRP系統ではヘテロ接合度He=0.146、RWNE系統ではHe=0.134であり、野生由来の飼育集団wild系のHe=0.300に比べると遺伝的均一性が高いことが明らかにされた。同様の解析を野生ウズラ集団に対しても行うことによって、長期閉鎖系を含む家禽ウズラ集団が野生集団と比べてどの程度の遺伝的多様性を保有しているか、遺伝的分化はどの程度かについて明らかにする。そして野生集団の遺伝的多様性の現状と地理的分化についても調査する。 野生ウズラについては現在、各地の博物館や研究機関に野生ウズラの試料の提供を依頼しており、筋肉組織や羽毛、剥製等からゲノムDNAを抽出し解析を進めている。
12.

ニホンウズラの新規マイクロサテライトDNAマーカーの開発ならびに遺伝資源の特性評価への応用

只野 亮1)、布目三夫2)、水谷誠2)、川原玲香3)、韮澤圭二郎4)、藤原哲5)、高橋慎司6)、川嶋貴治6)、河野友宏7)、松田洋一2)
1) 岐大応用生物
2) 名大院ABRC
3) 東京農大生物資源ゲノム
4) 畜草研
5) 日本生物科学研究所
6) 国立環境研
7) 東京農大生物資源ゲノム
日本動物遺伝育種学会 第14回大会
要旨:【目的】ニホンウズラは、卵・肉生産のための家禽であると共に、世代間隔が短く、多産である等の特性から、実験動物としても有用性が高い。本研究では、ウズラの新規マイクロサテライトDNAマーカーを開発し、国内の研究機関で飼育・維持されている遺伝資源の特性評価へ応用することを目的とした。 【方法】ニワトリのゲノム配列をリファレンスとしたマッピング法により得られたウズラのドラフトゲノム配列の中から、CAの2塩基を1単位とする繰り返し配列に関して、7回以上のリピートがある領域を検出した。その領域を挿んだ前後に、プライマーを設定して多型マーカーとしての実用化を行った。これらのマーカーを用いて、ウズラ13系統(合計389個体)をタイピングし、個々のマーカーの多型性を評価すると共に、系統内の遺伝的多様性と系統間の類縁関係を明らかにした。 【結果】合計で、26の常染色体上にある47の新規マイクロサテライトDNAマーカーを実用化した。このうち、最大で10のアレルが検出され、28マーカー(59.6%)が高い多型性を示した[多型情報量(PIC)が0.500以上]。次いで、開発した47マーカーを用いて13系統の遺伝的特性を明らかにした。系統内の遺伝的多様性は、実験用の長期閉鎖系統が最も低く、特定の選抜を加えていない野生ウズラに由来する系統が最も高かった。系統間の遺伝的分化の程度(FST)は、0.128から0.830の範囲であり、長期間(20年以上)にわたり閉鎖集団として維持されてきた結果、実験用ウズラの系統間では高い遺伝的分化が生じていることが明らかとなった。13系統の類縁関係を評価したところ、系統の起源を反映した結果が得られた。本研究で新たに開発したマイクロサテライトDNAマーカーは、ウズラ遺伝資源の特性評価における有効なツールとして利用できることが示唆された。
13.

マイクロサテライトマーカーとmtDNAを用いたニホンウズラの遺伝的特性の解析

布目三夫1)、只野亮2)、中野幹治1)、川原玲香3)、河野友宏3)、高橋慎司4)、川嶋貴治4)、藤原哲5)、韮澤圭二郎6)、水谷誠1)、松田洋一1)
1) 名大院・生命農・ABRC
2) 岐阜大・応用生物
3) 東京農大・生物資源ゲノム解析センター
4) 国立環境研
5) 日本生物科学研究所
6) 畜草研
ウズラ研究集会、2013年
要旨:ニホンウズラ(Coturnix japonica)では、様々な実験用系統が作成されている。それらの系統を研究に用いる上で、各系統の遺伝的多様性や、系統間の遺伝的類縁関係などは重要な情報である。また、野生種との遺伝的な違いや、家禽化の歴史的背景についても考慮する必要がある。 ニホンウズラは東アジアを起源とし、現在の家禽ニホンウズラは日本の野生個体から作成されたといわれている。そして、1920年代に日本で本格的な商業的利用が始まったといわれている。その後、家禽ニホンウズラはアメリカ、ヨーロッパや中東に輸出され、卵生産や体サイズなど、各地で有用とされる形質が選抜、改良されていった。そして20世紀後期には、アメリカやヨーロッパで改良された食肉用の大型品種が日本に逆輸入された。このように、ニホンウズラの家禽集団は複雑な歴史的背景を持ち、その遺伝的背景は多様であると推察される。本研究ではマイクロサテライトマーカーを用いて、様々な実験用ニホンウズラ系統、および野生ウズラ集団の遺伝的特性を明らかにするとともに、それらの遺伝的類縁関係をmtDNAを用いて推察した。 Kawahara-Miki et al.(2013)ならびにTadano et al.(未発表)で用いられた、ニホンウズラの1番~28番および性染色体をカバーする50個のマイクロサテライトマーカーを遺伝的特性の調査に用いた。実験用系統としては、Tadano et al.(未発表)で解析されたAMRPやWEなど、名古屋大学鳥類バイオサイエンス研究センター(ABRC)や信州大学などが保有する15系統を用い、それぞれ6~40個体を解析した。マイクロサテライトマーカーによるヘテロ接合度(He)の解析の結果、ABRCで維持されているrb系が最も低い値(0.11)を、ハンガリー(Hr)系が最も高い値(0.51)を示した。野生ウズラ16個体については、PCRが成功した20マーカーを用いた解析の結果、ヘテロ接合度は0.43と算出され、実験用として維持されている野生個体由来の系統(Wild系)の0.51に比べてやや低い値を示した。mtDNAのD loopによる系統関係を推察したところ、四つのハプロタイプが観察され、今回解析した実験用ニホンウズラ系統は複数の母系集団に由来することが示唆された。
14.

幹細胞のニワトリキメラを介した多能性解析

鏡味裕1)、臼井文武2)、渡邉晴陽1)、宮原大地1)、中村隼明3)、山本耕裕3)、藤原哲4)、大石 勤5)、安藤貞6)、小野珠乙1)、韮澤圭二郎7)、田上貴寛7)
1) 信大農
2) 自治医大
3) 基生研
4) 日本生物科学研究所
5) 産総研
6) 家畜改良セ
7) 農研機構畜草研

日本畜産学会 第118回大会、2014年
要旨:[目的]近年、幹細胞の分化制御に関する研究が精力的に行われている。我々はこれまで、初期胚由来の幹細胞をレシピエントに移植しキメラの体内で生殖細胞及び各種の体細胞系列に分化し得る事を確認してきた。そこで、ニワトリ皮下脂肪組織から細胞を採取しその分化能を検証した。[方法]ニワトリ脂肪組織を採取し、成熟脂肪細胞や血球細胞を除去し、低血清培地で培養し、各種の細胞系譜への分化誘導を試みた。これらの細胞にそれぞれOil red O染色、Alkaline phosphatase(ALP)染色を行い、更に誘導前後の遺伝子発現を解析した。また脂肪組織由来細胞を2.5胚に移植した。移植の4日後に胚の右後の肢芽にガラス針で裂傷をつけた。また、2日後に凍結切片を作成し、移植細胞の局在を観察した。[結果と考察]脂肪組織由来細胞は分化誘導後に骨細胞への分化マーカー遺伝子および染色性を確認した。移植した細胞は裂傷周辺に多く観察された。以上の結果より、腹腔脂肪組織より得た細胞は、in vitroで間葉系の細胞へ分化する事が示唆された。
15.

Characterization of the Recently Isolated Erysipelothrix rhusiopathiae and the Effect of Commercial Erysipelas Vaccines.

Tsutsumi, N., To, H., Tazumi, T., Kamada, T., Nagai, S., Nagano, T., Nunoya, T. and Iwata, A.
Nippon Institute for Biological Science
The 6th Asian Pig Veterinary Society Congress 2013, Vietnam

Abstract: 【Introduction】 Since swine erysipelas reappeared as a clinical problem in pig populations in Japan and in the Midwerstern United States, it has been considered as a reemerging disease that contributes substantially to economic losses in swine production. During 2008-2011 many outbreaks of erysipelas have been reported among vaccinated and nonvaccinated swine herds in Japan. The object of the present work was to determine genetic and biological characteristics of Erysipelothrix rhusiopathiae strains from Japan; and also to evaluate the protective effect of commercial erysipelas vaccines. 【Materials and Methods】 Eighty-three Erysipelothrix sp. strains isolated from pigs with erysipelas were used to determine serotype and nucleotide sequence of a 432-bp hypervariable region in spaA gene. The 15 field and 2 reference strains were used to determine the pathogenicity in mice and the sensitivity to acriflavine. A total of 250 female mice were used for immunizing with “Nisseiken” Swine erysipelas inactivated vaccine (SER, aluminum-adsorbed vaccine containing killed whole culture of E. rhusiopathiae strain Tama 96 of serotype 2) or “Nisseiken” ARBP/Swine erysipelas combined inactivated vaccine (BPSER, formulated with the killed cells of Bordetella bronchiseptica, E. rhusiopathiae strain Tama 96, and Pasteurella multocida toxoid), and “Nisseiken” Swine erysipelas live vaccine C (SEL, reconstituted live vaccine containing approximately 108 CFU of E. rhusiopathiae strain Koganei 65-0.15, serotype 1a, per ml). The control and immunized mice were challenged with the reference and field strains of E. rhusiopathiae.Ten conventional pigs, known to be free from PRRS and APP, were used for immunizing with SER or ARBP. The control and immunized pigs were challenged with the field strains. SpaA-specific antibody in pig serum was detected using the indirect ELISA with the recombinant SpaA protein as an antigen. 【Results】 Eighty-three (100%) strains were identified as E. rhusiopathiae, based on serotyping and spaA PCR. Fifty (60.3%), 5 (6.0%), and 28 (33.7%) strains were isolated from animals with acute, subacute and chronic outbreaks, respectively, of which 79 (95.2%), 1 (1.2%), and 3 (3.6%) belonged to serotypes 1a, 2a, and untypeable, respectively. Fifteen strains (including 3, 2, and 10 from acute, subacute, and chronic cases, respectively) were sensitive to acriflavine, and showed high levels of virulence in mice; of which strains from acute cases, and from subacute and chronic cases killed 100%, and 80 to 100% mice, respectively at challenge doses of 102 CFU per mouse. Based on sequence analysis of a 432-bp hypervariable region in spaA gene, 83 strains could be divided into 3 groups: (i) group 1 (3 strains of serotype 1a) had Ala-195 and Ile-203; (ii) group 2 (76 strains of serotype 1, and 3 of untypeable) had Asp-195 and 203-Met; and (iii) group 3 (one strain of serotype 2a) had Asn-195 and Ile-203. A total of 150 mice immunized subcutaneously with live or inactivated vaccines were protected against challenge exposure to one reference strain (Fujisawa, 1a) and four field strains of serotype 1a (Kumamoto-S1, Gunma-657, Gunma-649, Nagano-16). Ten conventional pigs immunized intramuscularly with inactivated vaccines (SER or BPSER) developed specific antibodies against the SpaA protein of E. rhusiopathiae and were protected against challenge with two field strains (Gunma-657, Gunma-649). 【Discussion and Conclusions】 The results show that sequence analysis also parallelled the mouse pathogenicity and the acriflavine resistance tests for discrimination of the live vaccine strain from E. rhusiopathiae field strains. It has been reported that the sequence analysis is easy to perform and prevent any ambiguity in the results obtained, affords the same results irrespective of the laboratory involved, and can screen more samples at the same time. Our findings together with data reported by other investigators support the idea that the majority of chronic strains not related to the live vaccine strain have high levels of virulence in mice. The present study indicates that the nucleotide and amino acid sequences of strains isolated from 2008 to 2011 were different from those of strains reported previously, and also suggests that the serotype 1a strains belonging to the group 2 might be widespread in pig populations in Japan. This is the first study to demonstrate that the commercially available vaccines could protect animals against challenge with the most recently isolated SpaA-type strains of E. rhusiopathiae.

16.

Genetic Characterization and protective immunity of APXIIA and APXIIIA of Actinobacillus pleuroneumoniae.

To, H., Tsutsumi, N., Tazumi, A., Nagai, S., Nagano, T., Nunoya, T. and Iwata, A.
Nippon Institute for Biological Science
The 6th Asian Pig Veterinary Society Congress 2013 , Vietnam

17.

ワークショップ 眼毒性リスク評価のサイエンス:お作法からの脱却 眼病変とリスク評価

渋谷一元
Nippon Institute for Biological Science
日本生物科学研究所

第40回日本毒性学会学術年会 、2013年

要旨:非臨床毒性試験において、眼毒性のリスク評価は社会的影響が大きいことから慎重に、総合的になされなければならない。非臨床毒性試験の中で、病理学的検査(剖検・病理組織学的検査)は試験の最終段階で実施されることから、毒性評価におけるウェイトが大きいと考えられがちであるが、in-lifeの種々の検査データを十分把握したうえで検査しなければ精度の高い評価を行うことができない可能性もあろう。病理組織学的検査は、眼球の組織レベル・細胞レベルの器質的変化を検出できることから、眼毒性の本質に迫ることができるが、病理組織学的検査にも限界がある。なぜなら、臨床所見あるいは眼科学的検査所見に基づいて、局在する病変を検出すべく組織標本を作製するものの、病理組織学的検査で眼球組織すべてを観察することは不可能であり、組織標本上に当該所見を見いだせるとは限らないからである。また、視覚路の機能的障害により生じる眼毒性は光顕レベル・電顕レベルでも見出すことはできない。加えて、実験動物の種差、系統差および加齢等による眼球の組織変化あるいは背景病変も毒性所見との鑑別診断にあたっては考慮しなければならない。以上のように、眼毒性の評価における病理組織学的検査は、十分な臨床および眼科学的検査所見の情報を得たうえで、適切な眼球の組織標本を作製し、用いた実験動物の眼球の特徴を把握した上で実施することが重要となる。これらの点を踏まえて、いくつかの事例を紹介したい。

18.

環境毒性評価におけるWE系ニホンウズラの有用性

渋谷一元1)、山下龍1)、大嶋篤1)、水谷誠2)
1) 日本生物科学研究所
2) 名古屋大学鳥類バイオサイエンス研究センター
第1回ウズラ研究会 、2013年

要旨:[目的]鳥類を用いた環境毒性評価の試験では、ウズラおよびマガモを用いることがOECDおよびUSEPAの試験ガイドラインに規定されている。これらの試験に用いられるウズラは、欧米ではコリンウズラ(Northern Bobwhite)が主体であるが、国内ではニホンウズラが用いられている。ニホンウズラはコリンウズラに比較して、体格が小さいことから被験物質の使用量を少なくすることができ、性格が温順であるため取扱いが容易である。加えて、WE系ニホンウズラは白色の卵殻を示すことから、検卵において胚の生存を容易に確認できる利点を有する。今回、WE系ニホンウズラを用いてこれまで実施した3つの一世代繁殖試験から得られた対照群の繁殖成績について報告する。[方法]6齡のWE系ウズラを入荷し、2週間の予備観察期間の後、試験群は1群16つがい、32羽に設定し、6週間の混餌投与期間を設定した。投与期間中に臨床症状観察、体重および摂餌量の測定を実施した。投与期間終了時に剖検し、生殖器および主要臓器の病理組織学的検査を実施した。投与期間中に産卵された卵については、産卵数、卵重量測定、卵殻検査を実施した後、貯卵して1週間毎に孵卵させた。孵卵7および14日に検卵し未受精卵および胚の生存を確認した。孵化したすべてのF1ウズラについて、2週間の観察期間を設け、臨床症状観察および体重測定を実施し、観察期間終了時に剖検した。[結果・考察]3試験の対照群の比較において、親鳥の雌雄の体重、つがいの摂餌量に明らかな差異はなく、各対照群16つがいの6週間の合計産卵数は519個、613個および587個、週毎のつがい当たりの平均産卵数は5.4個、6.4個および6.1個、平均卵重量は10.4 g、9.8 gおよび9.8 g、受精率は94.5%、97.0%および92.8%、孵化率は79.5%、87.8%および85.6%(対孵卵数)ならびに84.3%、90.6%および92.2%(対受精卵数)であった。以上の結果から、WE系ニホンウズラの安定した良好な繁殖成績が示され、この系統のウズラが鳥類を用いた環境毒性評価に有用であると考えられた。

19.

ニワトリの眼球

渋谷一元
日本生物科学研究所
第54回獣医病理学研修会 、2014年

要旨:本症例はファヨウミ種由来の近交系であるGSP系ニワトリに出現した不完全アルビノ様個体であるGSP/pe系の52週齢の雄である。起源種に比較して羽装の黒色部の淡明化がみられ、成長とともに眼球の突出、白濁を示してくることから、眼球の病態を検索するために送付され、剖検に供された。外観において、両側の眼球は軽度に腫大および突出し、水晶体が混濁していた。眼球は高度に硬化しており、固定後の割断ができなかったため、EDTA脱灰後に割断した。眼球内部には灰白色充実性硬組織が充満し、眼内組織の判別ができなかった。組織学的に、眼球内部は成熟した海綿骨により満されており、詳細な病理組織学的および免疫組織化学的検索から、網膜色素上皮が骨組織に分化転換したものと推察された。

20.

動脈硬化症モデルNIBS系ミニブタ作出に関する研究

島津美樹1)、小澤政之2)、堀井渉1)、布谷鉄夫1)、岩田晃1)
1) 日本生物科学研究所
2) 鹿児島大学大学院
日本畜産学会第117回大会

要旨:【目的】動脈硬化症は、日本人の死亡原因の第2位と第3位を占める心疾患、脳血管疾患の主要な病因である。そのため、動脈硬化症モデルを作出することは、有効な治療法がない心筋梗塞、脳梗塞等の現治療法の改良、並びに、新規治療法の確立に非常に有用である。本研究では、ヒトアポリポプロテイン(a)(apo (a))遺伝子を導入したNIBS系ミニブタの作出を試みた。【方法】apo (a)を生後0週齢のNIBS系ミニブタ1頭(雌)から得た腎由来初代培養細胞へ導入し、G418で遺伝子導入細胞株を選択後、免疫染色でapo (a)発現株を樹立した。食肉センターから入手したブタ卵巣から卵子を回収し成熟培養を施した後、卵子の除核を行い、既述のドナー細胞を導入した。再構築胚は、活性化処理を施した直後に開腹手術下のNIBS系ミニブタの卵管内に挿入した。なお、ミニブタの発情はaltrenogest投与により人為的に統御した。【結果】7頭の借り腹ブタに133.9 ± 9.5個のクローン胚を移植したところ、apo (a)遺伝子導入ミニブタを得た。以上より、将来的に動脈硬化症モデルとなり得る可能性を有するapo (a)遺伝子導入NIBS系ミニブタの作出に成功した。

21.

次世代シークエンサーを用いたEimeria tenella 強毒株と弱毒株スポロゾイトの遺伝子発現プロファイリング

松林誠1)、川原史也2)、八田岳士1)、三好猛晴1)、山岸潤也3)、M.アニスザマン1)、志村亀夫1)、磯部尚1)、北潔4)、岩田晃2)、辻尚利1)
1) 農研機構・動衛研
2) 日本生物科学研究所
3) 東北大学・東北メディカルメガバンク機構
4) 東大・院医・生物医化学
第83回日本寄生虫学会、2014年

要旨:Apicomplexa門に属する鶏Eimeria は、1宿主のみで生活環を完了する。特に病原性の高いE. tenella (強毒株)は、盲腸粘膜に侵入したスポロゾイトが無性・有性生殖を行い粘膜組織を破壊することにより、感染鶏に致死的な出血性盲腸炎を引き起こす。一方、強毒株を幼雛に経口投与し、糞便中に早期に排出されるオーシストを選択的に回収し、これを数十代継代することで弱毒化することができる。この早熟化された弱毒株は、強毒株に比べスポロゾイトが盲腸粘膜へ迅速に侵入し、それに続く3代ある無性生殖期が著しく短縮または1代欠落し、シゾントの増殖性が低下した特徴を有する。本研究では、E. tenella の強毒および弱毒化の分子メカニズムを解明する目的で、以下の解析を行った。宿主体内発育期の初段階であるスポロゾイトのmRNA からcDNA を合成し、超高速シークエンサーにより塩基配列データを取得し、網羅的に発現遺伝子の比較解析を行った。それぞれ約1億および8,000万のリードをE. tenella draft ゲノム配列データにマッピングし、FPKM値として発現量を算出した。その結果、約9割のリードがマッピングされ、強毒株では代謝関連およびロプトリーやミクロネームなど侵入関連遺伝子の発現量が上昇し、弱毒株では細胞分裂に係る遺伝子やペプチダーゼなどの発現量が上がっており、それぞれの株で特異的な発現パターンが観察された。配列多型解析からは、1塩基置換が複数確認できる相同性の低い領域が確認でき、これらの領域には強毒および弱毒化の責任遺伝子が含まれている可能性があると考えられた。

22.

Eimeria tenella強毒株と弱毒株スポロゾイトの比較トランスクリプトーム解析

松林誠1)、川原史也2)、八田岳士1)、三好猛晴1)、山岸潤也3)、M.アニスザマン1)、志村亀夫1)、磯部尚1)
岩田晃2)、辻尚利1)
1) 農研機構・動衛研
2) 日本生物科学研究所
3) 東北大学・東北メディカルメガバンク機構
第156回日本獣医学会学術集会、2013年

要旨:Apicomplexaに属するEimeria原虫により引き起こされる鶏コクシジウム症は、下痢や体重増加率の低下を主徴とし、重篤例では致死するため、養鶏現場では重要な原虫感染症である。中でも、E. tenella (強毒株)は最も病原性が高く、その病態は腸管内で脱嚢したスポロゾイトが盲腸粘膜に侵入し、無性生殖を行うことにより惹起される。一方、実験室内で作出されたE. tenella弱毒株は、スポロゾイトの盲腸粘膜への侵入が早く、無性生殖期の増殖性が著しく低下し、その期間が短縮した特徴を有する。実際に、この弱毒株を用いた生ワクチン製剤が農場で利用されている。本研究では、強毒株および弱毒株のスポロゾイトを精製し、mRNA からcDNA を合成し、超高速シークエンサーにより塩基配列データを取得した。それぞれ約1億および8,000万のリードをE. tenella draft ゲノム配列データにマッピングし、FPKM値として発現量を算出し比較した。強毒株では代謝関連酵素の発現量が上昇しているなど、それぞれの株で特異的な発現パターンが観察された。また、強毒株と弱毒株間で配列多型解析を行ったところ、興味深いことに1塩基置換が複数確認できる相同性の低い領域が確認でき、これらの領域には強毒および弱毒化の責任遺伝子が含まれている可能性があると考えられた。現在、発現上昇遺伝子や未知遺伝子の解釈を深めるため、アノテーションの強化とGene Ontology 解析を進めている。

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